青い空に、ふわふわと流れる雲。

輪になった煙草の煙が、そっと、その雲に重なる。



「……いつまでも、こうしていられたら良いのになぁ」


誰が呟いたのかはわからない。

でも 確かなのは、

そこにいる全員が同じ気持ちだったということ。





日々の忙しさから開放され、暖かい日差しの中でまどろむ4人。


そこには、迫り来る命の恐怖も無ければ、
牙をむき出して襲いかかって来る敵もいない。


忍として生を送る彼らにとって
普段の生活からは決して得ることの出来ない「安らぎ」

それを感じることが出来る、大切な時間だった。




「チョウジ!アンタね、お菓子食べ過ぎよー?」
「だってお腹すいちゃうんだもん」
「あのねー。そんなんだから、デ」
「おい、いの!ストップ!」
「ん、んー!んーー!」
「ったく……それは禁句だっつってんだろ、めんどくせー」



いつもと変わらない会話。
いつもと変わらない見慣れた顔。
いつもと変わらない、変わってほしくない 時間。



「せっかくの休みなんだからよ。のんびり過ごそうぜ、あの雲みたいにさ……」

澄み渡った青空を見上げる少年の表情は
いつもよりずっと、穏やかで。


「シカマルって時々、っていうかいつも?ジジくさいこと言うわよねー」
「うん。でも、シカマルらしい。ボクは好きだよ」
「ジジくさいのは嫌だけどー。……まぁ、私も嫌いじゃないわ」

少年の隣に座る幼なじみの少女と
ポッチャリ系少年の表情もまた、いつもよりずっと穏やかで。




こんな日は


いつまでも、ずーっとこうしていられたら良いのに、と。
淡く儚い想いを胸に抱いてしまう。


それは 決して 叶う願いではないのに。


それをわかっていて、どうして願ってしまうのだろう。




「多分、さ」
「え?」

「ずっと一緒になんていられないと思う」


「……うん」



「でも」



「……いつまでも、こうしていられたら良いのになぁ って思う」


「うん」





「お前らなら大丈夫だろ」


ボソっと呟かれた低い声。

3人が振り向けば、その発言の主は煙草をぷかぷかふかしながら
呑気にあくびなんかしている。


「まー、お前らなら。十年後も三十年後も一緒にいるんじゃないか?」


「せ、先生ホントにそう思う?」
「自信満々だけど、その根拠は何よー」

「根拠?そんなもん無いよ」
「ええっ!」
「なんだ、ないのか……」

「そんなもんいらないだろ」
「んー、まぁ確かに」
「あ、じゃあさ」




「十年後も三十年後もボクたちは一緒だとして。
 その時はもちろん、先生も一緒だよね?」




お菓子を口いっぱいに頬張りながらの、チョウジスマイル。
屈託の無い純粋な笑顔。



加えたままだった煙草を口元から少し離すと、アスマはにやっと笑った。

「もちろん」





青い空に、ふわふわと流れる雲。

輪になった煙草の煙が、そっと、その雲に重なる。



今日みたいな日は、あの大空に浮かぶ雲のように、のんびり過ごそう。

大切な仲間たちと一緒に。 

そして


十年後も三十年後も、きっと一緒に。





10班が大好きです!
彼らの休日をほのぼのと描きたかったのですよ。

でも、アスマさんの「死」を前提とするかしないかで
このお話の意味はグルリと変わってきます。

だからこのお話は、私の「妄想」であり「願望」なのです。




back